山本由美子先生にインタビュー!

コンサートの準備に追われてしまい、(パソコンをリハーサル室に置き去りにするなどの私の凡ミスもあり…)インタビューの公開が間に合いませんでした。楽しみにしてくださっていた方はすみません! 
 でも、私にとっても貴重な言葉ばかりなので、演奏会を楽しんでくださった方にも見ていただきたく、まとめました。見てくださったら幸いです。 

せっかくなので演奏会の時にとっていただいた写真も一緒に載せています。

コンサートの件で連絡は取り合っておりましたが、ゆっくりお話しするのは、1年ぶりです!  2020年12月15日インタビュー

久しぶりに見る先生は、いつ見ても少女の様…!

12月19日土曜日に毎年恒例クリスチャンが集うクリスマス・コンサート『京都シャローム・チャーチクリスマスワーシップコンサート』の開催も間近に控えていらっしゃいました。

ヴァイオリンとヴィオラ

山本「今年は(このクリスマスコンサートでは)ヴァイオリンばかり弾くの。ヴィオラが今二人いるから、私はヴァイオリンに回って。ヴァイオリンを弾く機会が他ではあまりないから、このコンサートでは近年ヴァイオリンを弾いているの。」

朴「そうなんですね。(確かに去年、先生がヴァイオリンを弾いていらっしゃるコンサートの写真をどこかでお見かけしました!)どうですか?ヴァイオリンを弾いたり、ヴィオラを弾いたりするのは。」

山本「うーーん、違う感覚は絶対必要だから。ヴィオラばかり弾いていると、一つの感覚しか育たない。でもヴァイオリンを弾くと、ヴァイオリンならではの色や持ち味をヴィオラにも持っていきたいなと思う。違う感覚を学ぶというのはすごく良いことだと思ってるよ」

朴「違う感覚を学ぶと、新鮮にもなりますよね。今まであった気づかなかったものに気づくというか。」

山本「そうね。だから、ヴィオラだったら朗々と弾けば良いところが、ヴァイオリンは細かいことがもっともっと必要で。そういうのを今勉強のために、ヴァイオリンを弾かせてもらっている。長年のブランクがあるから、全然なんだけど!」

朴「いつまでたっても勉強のモチベーションがある事、素晴らしいしそうなりたいなと思います。」

山本「こういうのはなんでも勉強になるから。何事も経験。

例えば、ピアノでも良い。歌でも良い。やっぱり感覚的に、なんの楽器でも良いから違うものをするっていうのは、プラスアルファになってくると思うね。」

©︎山本もも

ブラームスの六重奏

山本「本当に、この曲は良いよねぇ。とても楽しみにしています。」

朴「そう言っていただけて、私も嬉しいです。この曲はすごく青春が詰まっていて…大学時代のまさに青春時代に、先生の元でヴィオラを勉強してたので、そう言った昔の気持ちも思い出すんじゃないかなと思っているんです。」

山本「でも、まだまだ青春でしょう。」 笑!!

朴「先生もですよね、ずっと生涯青春ですよね。」

12月23日リハーサル の様子 ©︎山本もも

年を重ねる

山本「本当に、自分の年っていうのは忘れてるっていう感じはあるね。年だっていうのは一切考えないね。年だからこう、年だからこうっていうのは違うんじゃないかなって思っていて。

要するに、今までの集大成が“今”という自分に出てくるわけでしょう。今まで、どうこう生きてきたから、“今”の姿がある。“今”を改善すれば成長がある、大丈夫になっていくと思うの。という発想なの。だから、死ぬまで弾けるなって思う。」

朴「心底、ずっとそうやって生きたいです。例えば、どういう問題があって乗り越えてきましたか?」

山本「例えば、40代に入ってから、とか50代に入ってから。指が前より動きにくくなったとか、あるのよ。(手を動かすために)脳から手に指令するスピードが年がいくにつれて確かに遅くはなるんだけど、その感覚がどこかで失ったりして。もう一度、新しくその指令を作り直すの。ゆっくり、頭からくる神経を開発するの。」

朴「意識的にバイパスを作るって感じですね。」

山本「そう、意識!無意識に弾いちゃっていた部分があったわけで。それをもう一度意識的に自分で確認していくという作業。そうすると神経がもう一度繋がる。昔だったらそんなに細かく使ってなかったところが、意識していくと…ミクロの世界みたいな感じ!さらにミクロの世界に行くと、つながりがよくなる。その意識をどんどん増やしていくと、若い頃には使ってなかった所まで使えるようになって。そうすると、年をとっても大丈夫っていう確信があるのよ。深堀りしていく。

年いったからだめだ、感覚は、感じたことないの。

 まだ、そんな時期じゃないかもしれないけれど、老いを感じた時に、『仕方無い』と思わない方がいい。絶対に先があるから。」

朴「わかりました!」

山本「自分でいうのも変だけど、前より今の方が弾きやすいのよ。20代と比べてもね。」

朴「それは羨ましい。そういう体を作るって本当に大事ですよね。楽器を弾かなくても。ずっと、そう言い続けたいです。」

山本「若い時は、無理矢理でもやっちゃうというか。歳をとればとるほど、無理が効かなくなってしまう。その無理が効かないというのは、逆に良いことで、じゃぁどうしたらそれが自然にできるかということを考えていく作業をするということ…例えば、腕が上がらなくなるのよ。前だったら筋肉でバンバン動かしていたのよね。それで上がらなくなる。あれ、何で?って考えるの。使う場所が一部分だったってことなのよね。だから、使うところをもっともっと増やすの」

朴「他の場所が、そこを助けてあげる感覚ですね。」

山本「そうそう、体全体でいろんなことをしていくの。そうすると、自然な形に自然に近づくことができるみたい。だめになることが、改善するきっかけになるっていうことよね。」

©︎山本もも

信仰

朴「先生そうやって思えるのは、信仰の心というか、心が整っていることが大きいのではないでしょうか。」(由美子先生は、ドイツでキリスト教に出会ってクリスチャンになられました)

山本「まだまだですよ。モットーとしては、何かを知ったということはまだ知らなきゃいけないことも知っていない、ということなのよ。何か知った、というのはすごく嬉しいことよ。でも、まだまだ知ることがあるんだなってことを知ることでもある。もう、一生かけて、学ぶのよね。」

朴「経験ですね。」

山本「何かマイナスなことに思えても、それは絶対にプラスなことになるっていう。失敗したとしても、それは強さになっていくってことを、知っているから。それは私自身の信仰を持っているが故の強みではあるかもしれない。」

朴「根本に信じることがあるって、大事ですよね。使命、使われる道があるって思えますもんね。」

山本「ドイツでイエス様を信じたんだけど、それまでは個性ということにすごく悩んだの。先生にもたくさん言われて。

あなたらしく弾きなさい。あなたの個性を出しなさい、と。

日本語を流暢にペラペラ話すけれど、下手なドイツ語で一生懸命に伝えたいことを話すように、弾きなさいって言われてね。」

朴「それすごく良い感覚ですね。よくわかります」

山本「私のヴィオラの先生が、日本人は言われたことをすぐにできるんだけど、個性っていうものが見えない。とおっしゃった時本当にショックで。自分の個性ってなんなんだろうって。そこから色々始まったのよ。そうこうしているうちに、キリスト教と出会って。『私が私であって良いんだ』と。それが個性って言うんだなって。

自分の作った自分の像(虚像)になろうとしてた一面があって。他の人のようになろう、とか理想、とか。

自分が自分であるがままの自分であって良いし、そしてそのまま自然にそれを表現すれば良い。その中で、自分の中で、それがさらにさらに磨かれていく。

他の人のようにならなくて良いっていうね。それが個性なんだってわかった時に、すっごいホッとしたというか。見つけた~!って思った。

自分の信仰と音楽の道の課題が一つになった瞬間でもあったかな。」

朴「私自信がなかったんですよ。今も特に、自信があるとは言えないんですが。それを身につける時に、人のようになろう、憧れる人のようにならないといけないって思ってた面がありました。あと自分が決めた自分の像っていうのから外れたらすごく責めたりして。何か、足す、付け足そうと思っていたことが多いんですよね。でもそれって気づくまでにやっぱり時間がかかるというか。自分の根本に何か生まれてくるには、結局試行錯誤してからじゃないとダメなんですよね。最初から生まれているわけではない。持っているものはあるんだろうけれど。」

山本「そうそう。もちろん、学びの最初の段階っていうのは、『真似』から入るからね。でもある所にきた時に、自分という個性、あるがままの自分を見つける。そっからやっと次の段階に行けるのよね。」

朴「その見極めのタイミング、重要ですね。その段階のなるべく早い時に、気付きたかったなと思いますね。でも、小さい子を今、たくさん教えていて、、最初にそういうことに辿りついて欲しいけれど、それは難しいというのもありますね。」

山本「最初はね、どうしてもね。私はドイツで学んだことで、抜けたかなぁ。」

©︎山本もも

今井先生に習いたかった

朴「先生はご結婚のタイミングで、帰国されたんですか?確か毅先生が札幌交響楽団に決まってからでしたか?(山本由美子先生の夫である山本毅先生は打楽器奏者で現在京芸で教授をされています)」

山本「ドイツで知り合って結婚を考えて。先に彼が札響に行って…しばらく私はドイツに残っていたの。だから1年くらい離れてたのよ。日本に帰るか、それともドイツに残って勉強続けるか、ものすごく悩んだ。その時に今井先生に出会っていて、尚且つ教えてあげるって言ってくださっていたの。そういうタイミングだった。どうしても習いたかったんだけど…ずっと祈っていて、そしたら御言葉がぽんぽんぽんと与えられて。その御言葉が『教え』となってくれて。それで、日本に帰って結婚した。その後も悩むことはいっぱいあったから、わからないことはいつも聖書に聞いて。その度に、御言葉が与えられて、教えてもらって。そしたらいつも閃きが与えられて。

やっぱり、今井先生に習いたかったって思いがずっとずっとあったわけ。その後も。

10年前かな、小樽で今井先生の講習会が始まったのは…その時に先生と再会した時に、やっぱり習いたいですってお話をして、小樽に毎年通うようになったの。もう、その時には子供も大きくなってたし(三人の子供さんを立派に育てられています!次男さんは音高・京芸ともに一つ年下の後輩で今でも仲良し、山本善哉さん。)もう、餌を待ってる雛鳥ではなかったから笑!

置いていってたのよ~。」

朴「子育て終わってから今井先生に習うことになったんですね。」

山本「そう、ようやくね~。10年間ね、ソロのレパートリーや、室内楽もして。アシスタントとして、いろんな方に教えてたし、本当によく勉強させていただいた。とても優秀な人もたくさんいるし。」

朴「今井先生の教えってどんなものですか?(私も何度かレッスンを受けて、素晴らしいことは重々存じ上げているのですが、由美子先生からみた景色をお伺い・・!)」

山本「その人の個性をすごく生かしてくる。今井先生が思ってる、演奏とは、自分とはこうよっていうのは押し付けない。その人の持っている良い点をいかに伸ばすか、とても引き上げてくれる。本当に素晴らしいと思います。だから、いろんな生徒たちがいるかな。先生によっては、フォーム・箱の中に入れる教え方っていうのがあるけれど、今井先生の場合箱から取り出してくれる、そういうレッスンをしていただきました。」

朴「それパッとみて分かるんですよね。」

山本「あの先生ね、感覚が鋭い人だから。目力もすごいのよ!!笑 パッとみて、すぐ分かるみたい。すぐに的確なアドバイスもくださるし。本当に、素晴らしい先生だと思っています。」

朴「いろんな経験して、そんな風に教えることができたらなと思います。」

山本「たくさん経験してね笑! 本当よね。私もそうだもんね。」

©︎山本もも

由美子先生と京芸

朴「私たちの時代は副科のレッスンばかりでしたよね。(現在はヴィオラ奏者として活動する、同じ学年の細川泉ちゃん・九響首席や、矢島知愛さん・九響メンバー、他フリーランスヴィオラ奏者として活動する京芸卒業生は多いのですが、在学中はほとんどの生徒が副科として先生にヴィオラを習っていました。)」

山本「(私が在学していた)当時専科は木田佳余さんだけだったしね(現在ドイツ・トリアー歌劇場ヴィオラ奏者)。何しろヴィオラという楽器を好きになって欲しいなと思って教えてたのよ。」

朴「ヴィオラもだし、先生のことがみんな大好きでしたよ。レッスンも、練習もしないのに、癒されにだけ行ってくるという会話を友人たちと何度もしたことがあります。(私だけか、すみません、門下の皆様)」

山本「みんな練習してなかったよね、本当。笑!! 副科だから、いっかっていう気楽な気持ちでもいたわ。」

朴「でもそんな人たちがレッスンに続々くるのは、大変なことだったと思います。1日かけてレッスンされてましたしね」

山本「本当、よくやってたなぁ笑! でも一人一人いい子ばっかりだったから、楽しかったのよ。」

朴「そういう思い出に残っててくださってて、何よりです。」(よかったです・・!)

©︎山本もも

感染症で起こった様々なこと

山本「咳エチケットや、マスク、手洗い、気をつけなければならないことは、気を付けてるよね。それは気をつけるんだけど…怖がっても仕方ないのよね。私は、信仰があるから、神が導くようになるというか。極端にいうと死んでも天国だからね。そういう意味で信仰があるからぶれない所はあると思う。

この感染症ではなくて、心配する人たちや感情論、感情論による二次災害が怖いなと思っていて・・コロナより、人の目を気にしてしまってね。不自由になってしまったなと思っています。私たち音楽家・演奏家というのは不自由さは持たない方がいいなと思ってる。音楽会っていうのは、この世の中が余りにも縮小することに対して、縮まっているものを広げて、リラックスさせるという働きがあると思う。もちろんこの状況、体調など聴きに来られない人はいると思うんだけど・・生きててよかった、ていう感覚があるでしょう?その感覚を、音楽家として提供できればっていう風に思っているのよ。」

これ、全く同じではないですが、、私も芸術家として、この世の中にできることはなんだろう、と思ったことがあり、夏に書いたブログです。生きていてよかった、生きている意味があるように、芸術のサイドから働きかけられないだろうかと、思っています。

山本「自分自身は解放されていないといけないし、周りがどうであっても、縛られないようにしようと思っています。生きることの活力、私たちは生きているんだっていうこと、それを提供できたらなと思ってる。この感染症を通して、自分の反応も、周りの反応もすごく興味深いなぁと思いました。

真理を知っていくと、私たちは自由になるのよ。嘘や、騙されたり、私たちは巻かれてしまう。だけど真理はいつも救ってくれるし、それを音楽で発信していきたいなと思っています。それは、京都芸大終えて、もっと思うようになったの。

もっともっと発信する必要があると思ったから、とりあえず、来年リサイタルをやることにしていて。11月5日(金)19時からバロックザールで。」

朴「わぁ、それは是非ご一緒したいです。」

山本「レベッカ・クラークは弾こうと思ってるのよ。すごくいい曲だよね。」

是非皆さん、2021年11月5日金曜日に、バロックザールにいきましょう!!そんな先生の思いを、浴びたいと思います!。

編集後記

由美子先生にヴィオラを習ったのは、大学2年と3年の2年間。私は練習も全くせずに先生に習いに行っていた、不届きものなのですが、先生から受けた教えはものすごく私の体に浸透していて。信仰からくる、先生の穏やかでブレない信念に何度も心穏やかにしていただきました。そのうち、自分で自分の気持ちを穏やかにする術を学んだ気がしています。

今回お話しをさせていただき、先生がこれほどまでに前向きで貪欲に学んでいらっしゃること、先生の音楽や姿勢はこういった考え方から来てるんだと、改めて知りました。若い頃の悩みを超えられたところから、その時々の正解を見つける中で、どうやったら道が開けるかを人生通して学んでいった・・そんな印象を受けました。経験からくる知識ほど強いものはありません。そういう意味で、私もたくさん学び、何か失敗と思えるものもたくさん経験をして、私の生徒さんに有益な経験話をしてあげれたら、それはそれでとても良いのでは!とワクワクしながらお話しを聞いていました。

12月23日に行われた演奏会は、本当に素晴らしく皆の気持ちがぴったりとまとまり、素晴らしい演奏会となりました。先生のリハーサル での提案はもちろん素晴らしかったのですが、どのように皆と融合していくのかも、見ていてとても勉強になりました。 先生は、本当に柔らかい!

「何か失敗があったとしても、それは強さになっていくことを知っている」

ついつい失敗した後なんかは忘れがちですが、胸に刻んでおきたいと思います。

改めて、23日コンサートの報告をさせていただきます^^

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