ヴァイオリニスト上敷領藍子さんにインタビュー!

先日出演させていただいた『あいこの音楽友だち部屋』。DUO GRANDEとして共に活動する上敷領藍子さんに、改めてお話を聞かせていただきました。 

あいこの音楽友だち部屋

まずは、このコロナ時期から藍子さんが立ち上げられたyoutubeインタビュー・プロジェクトのことについて。

 朴「これまでのシリーズで、何人の音楽家を紹介されていますか?どんどん更新されている様子、編集にも慣れてきていますよね。」

上敷領「今まで取り上げた方は7人ですね。現在8・9・10回目を同時に編集作業中です。8回目が細川泉さんなんですが、実は泉ちゃん、このStay home期間の練習により家での音出しに苦情が来たらしく、明日引っ越しされるそうなんです。それで少し行ったり来たり、インタビューどころではなく・・本当に大変そうでした。」

 この時期だからこその音楽家の引っ越し・・私も何人か聞きました。音への苦情は小さい問題ではなく、やはり音を出すことを職業としている者としては、辛いものがあります。

泉ちゃんと私朴梨恵は京芸同級生。九州交響楽団首席ヴィオラ奏者。

上敷領「今月分は12、13回くらいまで企画を決めています。大体今一つの動画は20時間くらいで作成しています。」

4月23日の初アップロードから6人の音楽家を紹介されています!!

朴梨恵(va)
木下雄介(va)
須賀麻里江(vn)
原裕子(va)
加藤文枝(vc)
小関郁(vn)
⑦ 𠮷武優(pf)
⑧細川泉(va) coming soon!
⑨増田桃香(pf) coming soon!
⑩大岡仁(vn) coming soon!

テレワークでお伺いいたしました。画面に映る姿も綺麗な藍子さん。

上敷領「お客様というのは通常、演奏を聴いて気に入って、その人のファンになりその人のコンサートには足を運ぶようになる、という流れだと思います。

でも、クラシックの場合特になのですが、例えば知り合いに音楽家がいたら、知り合いだから聴きに行こうかな、ということも沢山あるんですよね。私たちもそうだし、お客様もそう。

そうなると、演奏だけを聴いてお客さんになってもらうというのは、実は至難の技なんです。知り合いだから(コンサートへ)行くという感覚を持てるということは、その人の話している姿や考え方に何か共感するものがあれば、演奏をこれまで聴いていなくても演奏を聴いてみたいな、という風になるはずなんですよね。」

朴「大きな一歩になりますね。」

上敷領「一度、その人の人間性に共感できたらその人の演奏はその人が演奏している限り、聴きたいなと、根強いファンになってくださると思うんです。」

朴「ただその演奏、ではなく演奏家である人間に興味を持ってくださるということですね。」

上敷領「喋っている、という普段舞台では見ることができない姿をお客様に聞いていただくということがメインでこの企画を始めましたが、蓋を開けてみたら割と音楽家、業界の方が沢山見てくださっている、ということに今はなっています。」

朴「それはとても大事。やっぱりその業界の人が良い情報と思うものが、結局一番本質で普遍的で伝承されるものとなると思います。

 1986・7年生まれの音楽家を取り上げていますよね。」

上敷領「そう、みなさん同い年です。
切磋琢磨して一緒に学んできた音楽家たちの中でも、私は特にこの同学年にフィーチャー(注目)したいなと思ったんです。」

朴「藍子さんが組んでおられるパトス・ピアノ四重奏団も全員同い年なんですよね。やはりそのことも、この企画を作るきっかけになりましたか?」

上敷領「パトスはただ、偶然だったんです。どっちかというと…もともと小学生のころから私たちの学年って楽器をしている人たちのレベルがすごく高いと言われたんですよね。」

朴「バイオリンは特に、当たり年と言われたんですよね」

上敷領「神尾真由子さん初め、木嶋真優さん、梁美沙ちゃん、大岡仁くん、瀧村依里ちゃんもそうだし。
コンクールなどでも、『入賞絶対するよねグループ』(!)がいてね。そういう確実に実力のある人たちが沢山いる中に埋もれてやって来たから、今があるんだなと。
私たちの学年が、レベルをキープできているのは、そういった人たちがいたからなんだなと。」

朴「引き上げてくれた、というのはありますよね。今まで紹介されている6人という音楽家だけでも本当にたくさんの個性があって。私は全部もれなく、楽しく拝見させていただいています。」

上敷領「意外と、桐朋の方たちと在学中関わりがなかったので登場はしないのですが、桐朋の方も本当に優秀で、宮田大さん、滝千春さん…沢山いらっしゃいます。」

朴「確かに、どこ見渡しても本当に優秀な学年だったなと思います。この企画初めてみてどうですか?実際に話を聞いて感じることなど、教えてください。」

上敷領「第一印象としては、やっぱり皆さんそれぞれすごく経験を積んできてるなと思います。

その経験から生まれてくる言葉や考え方…芯が通っててブレない

自分の生き方っていうのを自分なりに皆それぞれ見つけ出しています。

やっぱり!

やっぱり!!

向き合ってるんだなぁと思いました。そういう職業なんですけどね。」

朴「パトス・ピアノ四重奏団について出てきたので、お話を伺っても良いですか。」

パトス・ピアノ四重奏団

上敷領「不思議なご縁で出会った4人だと感じています。本番前には1週間ほど集まって8時間くらいリハーサルするけれど、全く疲れない。多少疲れるけれど、良い疲れで夜はぐっすり、朝もぱっちりという、普段の私にはなかなか経験出来ない目覚めの良さ。笑 

これだけでも充分な幸せを感じるけれど、音楽を一緒に作れる喜び、同じ方向を向いて取り組める安心感は本当に幸せだなと思います。後皆同い年なのも、不思議な感覚。学生終わってからは、どの本番も全員同い年という事はほとんど無いので、4人でいるとなんだか小学校のクラスメイト、みたいな懐かしい安心感を感じます。」

朴「室内楽を通した人間の関わりは特別なものですよね。大切な仲間と長く音楽を分かち合うためにしていることってありますか。」

上敷領「これはどこのグループでもあり得る事かなと思いますが、コミュニケーションの大切さです。個人的には気をつけている事は、相手の感情や考えを自分の推測で決めつけてしまわない事かな。どんなに些細な事でも、文字や声にして伝える、確認しあう、気持ちよく意思疎通が出来るように丁寧に伝える、という意識を怠らない様に努力しています。」

朴「誤解が生じてしまうことも多々あるし、自分の基準で考えてしまう事もある。でもそのコミュニケーションの為の努力を怠らない。本当になかなかできないことです。私も大事だと最近気付きました。」

2019年11月京都・バロックザールでの公演後

上敷領「それでも、ついつい言葉足らずになってしまったりして、一人で勝手にカッカしてることもあるのですが(笑)

私以外の3人は男性なのもあるのか、3人ともとてもおっとりしていて寛大な性格なので、せっかちな私は彼ら学ぶ事が多くて、以前よりも増して自分の感情と向き合う事が多くなりました。多くの事を気づかせてくれる大切なメンバーです。」

朴「大切なメンバーだからこそ、長く付き合っていきたいですもんね。その有り難みは私も年々・・増しています。私と付き合ってくれてありがとう、みたいな。

 さて、あいこの音楽友だち部屋のお話なのですが、例えば、小関郁(ふみ)さんの時⦅第6回⦆におっしゃってたスラー・スタッカートの件。私実際見た後に試してみたんですが、あまり上手く行きませんでした。でも、実際のそういう弾くための役立つ情報がふんだんに盛り込まれているから、お得感もあって嬉しい。」

上敷領「あの件ね、そう。結構奥が深いんです。元々のレガートがボーイング(弓の使い方)で上手に弾けていたら、と彼女はおっしゃっていたんですが。

ボーイングは綺麗に弾くのが難しくて、簡単にはレガートってできないものなんですよ。

一定のバランスで弾く事は至難の技なんです。例え、同じ弦で(Aー)と弾いていたとしても。」

盛り沢山のお話がある、あいこの音楽友だち部屋企画。

朴「弓のバランス、弦の張力、いろんなことをかなり細かくプロフェッショナルに知っていないとできない事ですね」

上敷領「今回初めて知った事なんですが、彼女は沢山練習してしまうのだそうです。このコロナに関わらず、日常に於いても。だから今家にいる事を推奨されているこの状況、なんとか3時間以上は練習をしないように、自分で決めているのだそうです。」

朴「本当にいるんですね、そういうタイプが!」

上敷領「学生の時から(藍子さんと郁さんは藝高・藝大ともに同級生)、どうしてこんなに完成度が高いんだろうって思ってたんです。そしたら、やっぱり弾いている量が違うんだ!と、心底、驚きました。」

朴「やっぱり弾いている量が違うことによって、単に発見が多いということになるのでしょうか。」

上敷領「郁の場合は…本当に細かいことまでテクニックが行き届いている。それも昔から。本人は、色々問題はある、とのことなんですが、私からしたら明らかにミスが少ない。

 例えば、早いパッセージも全部の音が明確に聴こえる、とか。オーケストラで一緒に弾いていても。『何でそんな速く弾けんの!?』と。でもやっぱり日頃のトレーニング…相当積み重ねてきたものなんだなというのが、よくわかります。

やっぱり楽器を弾いてる時間が長いことに、そもそもやはり意味はある。

朴「意味がある練習、ない練習を凄く考えたりするけれど、やっぱり時間かけてるものは結局時間かけてるんですよね。意味ないと思ってた練習も巡り巡って意味あったりする・・でも、本当それ、人柄そのまま表してる気がします。」

上敷領「本当にそうです。実は、泉ちゃん⦅第8回アップロード予定⦆がこのコロナ影響で演奏会が全てキャンセルとなり、モチベーションを保つのが音楽家にとって、今とても大変なのではないか。音楽家は誰しも大変なのでは、と言っていて。その気持ちはとてもよく理解できるし、賛同だなと思いました。続いてインタビューをした大岡くん⦅第10回アップロード予定⦆にモチベーションをどのように保っているのか、尋ねてみたんです。そしたら、

『ん??モチベーション?……なんで?』

って返答で。

本当に面白い…

大岡仁さん。同じく小さい頃から切磋琢磨したお仲間。藍子さん、私とともに関西で特に、ずっと影響しあって生きています。
大岡さんと私は大学卒業後同じタイミングでドイツへ留学。ベルリンで2年ほど、裏の裏に住んでたこともあります。(左・寺田富美子さん。京芸の同級生です)

朴「本当に人それぞれですね、何を考えて、どう考えているのか。」

上敷領「本当に。彼の場合は、みんなと全然視点が違って
舞台に出る時どんなことを考えているか、っていう質問の答えだったんですが。

新しい…なかなか出てこない発想というか、聞けばその通りなのですが、そこまで考えが至るということはなかなかすごいな、というような事。一歩先を行っているような感じ・・リハーサルの考え方とか。

そういう話を始めてくれたんですよね。凄く興味深い話でした。」

朴「いや〜〜それは聞きたい。」

上敷領「これは是非動画のアップを、楽しみにしておいてください!」

インタビューは慣れてきましたか?

上敷領「インタビューそのものは慣れてきたんですが、見れば見るほど自分の滑舌の悪さに反省しています。ら行(らりるれろ)が凄く下手なことに気付いて…毎日ボイス・トレーニングしています。」

探究心旺盛な藍子さんだったらすぐに想像できる事ですが、そこも極めているとは思いもよりませんでした! 

上敷領「私の癖なのですが、口角が上がったまま話してしまうんです。例えば『う』や『お』の時はそれに適した口の形があるのにも関わらず、ずっと口角が上がったままなんです。

映像を見て気付いた自身の話し方について、研究されているそう。

アナウンサーの番組をYouTubeで見てみると、文章が終わった後にしっかりと口を閉じるんです。唇と唇をしっかり閉じて音を閉じるんです。私はそれをしていなかった事に気付き、だからだらしなく・舌足らずの様に聞こえるのかなと・・それは、私たちの使う関西弁から来てるかもしれないです(笑)

ここが筋肉痛に!

ボイストレーニングをし始めたら、首の脇、顎の付け根が筋肉痛になって。そんな沢山トレーニングをしたわけではなく、2.3分しただけなのですが。お風呂に入ってる間、とか隙間で練習した程度なんです。それほど日頃使っていないということが分かりました。」

朴「そういった所に着眼し、改善して行こうと思うことが、凄く藍子さんらしい。」

これからの音楽生活

ここからは音楽活動について、藍子さんの考えをお伺いしました。

フリーランス奏者としてオーケストラ・室内楽・ヴァイオリンの先生として様々に活動する藍子さんが見るこれからの音楽界は・・

上敷領「コロナが完全に収まるまでには数年かかると言われていますが、その後、クラシック音楽業界の在り方、音楽経験のされ方というのは、確実に何かが変わると思います

簡単に言えば、インターネット・オンラインを使ったサービスは大きな役割を占めてくると思うんです。郁さんの動画で彼女もおっしゃっていましたが、生の音楽を…密でしか成ることがない生の音楽を、肌で感じることに価値があるという世界であるにも関わらず、オンラインが大きな割合で認められていくかもしれない。レッスンにしても演奏の配信にしても。

それが致し方ない事ならば、どうすればプラスに変えてお客様にとって心地の良いもの、安らぎとなるものとして届くのだろう、というのはかなり大きな課題なのではないかなと思います。生の音楽を聴いて、肌で感じて心まで届くというのは一番あって欲しい姿なんだけれど、それが今叶わなくなってしまった。いずれは改善されるだろうと信じていますが・・

ただ、オンラインで満足する人も出てくるだろうとも思います。それは否定することではないし、それがその人の楽しみ方の一つだから。そういう『ものの考え方』オンラインで音楽を届けることの意味を音楽家たちが柔軟に考えていくべきなのかもしれない、とも思っています。その辺がね…私自身難しくて。嫌なんです、オンラインで演奏配信するのは。やっぱり本望ではないから。 

でももし強いられるとしたら、何か双方にとってプラスになるような音楽を創る方法を見出す必要がある、それが一番大きな課題なのではないかなと。それを思ったときに、自分が一番何ができるかなと思い、「今何してる?」の企画を始めたわけです。」

最後に一言

 上敷領「悲観的になりすぎないこと・・かな。もちろん政治に対してや色々なことに対して批判的な考えが出てくる。

でもそれと自分が命を持って生きることっていうのは全く別のことで、私自身フリーランスで今とても大変な状況なんですが、自分の人生の目的だけは失わないということは、どんなタイミングに於いても必ず心に留めて生きていきたいなと思います。

最近、自殺者とか増えてきてるとニュースで見たりするんです。確かに経済的に破綻がきて、自分で命を絶たないといけない状況もあるかもしれない。その方たちの立場に本当に立って考えることはできないから、簡単に言える問題ではないということも理解しているんですが、でも、何か生きる為のモチベーションを日頃から見つけるというのはこれからとても大切になってくるのではと思います。」

編集後記

 最後におっしゃっているのは、想像力と創造力とも言えると思います。私はこのコロナの期間で何が一番重要なのかに思いを巡らしたとき、その二つの言葉にぶち当たりました。だからこそ、アートやスポーツのできる世界を尚のこと信じるようになり、その秘める可能性の大きさに賭けても良いのではと思うようになりました。

上敷領藍子さんの、一言一言考えながら発せられるその言葉に、私も共感するものが沢山ありました。一つの事柄を色々な側面から理解しようとする藍子さんの言葉を、感動しながら聞いていました。 

皆さんにもきっと伝わると思うのですが、本当に、この『言葉』というのは全く音楽と同じで、藍子さんの思慮深く、理解のある音楽も私は大好きです。

今模索しながら活動していることが、ある程度まとまったら同世代で集まり意見交換などしてみたいなと思いました。

貴重なお話をありがとうございました!

上敷領藍子さん情報

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私たちは2019年4月から、DUO GRANDEとして、京都コンサートホール主催アウトリーチ事業に関わらせていただき、たくさんの子供たちに音楽を届けるという活動をしております。 

 ▶︎DUO GRANDEスケジュール

 ▶︎上敷領さんについて私のブログでも以前紹介しています。

▶︎藍子さんにインタビューを受けた感想、動画の補足など

またこちらでも最新情報アップしていきます!
水面下で、CDを絶賛作成中です・・☺️

 

2020-05-22|
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コメント1件

  • 中野信也 より:

    上敷領さんの考えや思いがとてもよく伝わってきました。聴衆からするとまさにそうなのです
     室内楽である音楽家さんの音楽を聴きに すると共演者の方の音楽も聞いて 良いと感じると共演者の方のコンサートもというのも、音楽家さんは創造される音色と響きが全てなのですが、音楽家さんの思いとか 生き方とか何か 琴線に触れる音楽家さんと感じると 聴きたいなと思いコンサートへ行きます。まさにそうだと思いました。
     みなさんの音楽をコンサートで早く拝聴出来る日がきますように

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