ピアニスト守重結加さんへインタビュー!

Special Chamber Concert in TOKYO vol.2 に出演してくださるピアニストの守重結加さんにお話しをお伺いいたしました。(2020年6月2日)

守重「ご無沙汰しております!」

昨年末、冬の植村太郎合宿で弾いて頂き多大なるサポートいただきました。

朴「本当に、ご無沙汰しております😭」

ビデオ越しですが、お会いできたのがとても嬉しかった。
半年ぶりの再会に聞いてみたいことがたくさんあったので、インタビューは2時間にも及びました。

朴「自粛期間、どの様に過ごしていましたか?」

守重「皆さんそうだと思うのですが…3月からコンサートは中止の連続でした。最初の方は公演をするかしないかまだ分からない様な本番もありました。開催されるかどうかあやふやのまま・・でも演奏するという、本番に向けての気持ちは持ちつつ過ごしていました。それも段々変わってきて、全ての公演がなくなりました。

最初はショックでしたが、段々とキャンセルの痛みにも慣れてきました。麻痺してきたんですね・・この10月に予定されているコンサートまで、今のところ本番はありません。それが分かると、急に自分の手から力が抜けてしまい、何もできない自分に焦りを感じました。」

※8月に本番ができたそうです。詳細はこちらから

朴「何も出来ないことはないと、思いますが…その焦りの気持ちはとてもよく分かります。聴いていただく機会があるからこそ、使命があった手なんですよね。」

守重「けれど、どこかで「何も出来ない」この状態で生まれた時間で、何を始めよう?と前向きな自分もいました。

4月終わりからはオンライン・レッスンを中心とした生活が本格的に始まりました。これまで対面で教えていた生徒さんもいますが、画面越しに初めまして、をした方がほとんどです。それからは不思議と一つも大変と思わなくて。多い日は1日に8人レッスンをしたりもするのですが、生徒さんから元気をもらっています。コンサート活動が再開しても、オンライン・レッスンはこれからも続けていきたいと思っています。

また、突然目の前にバンっと現れた大量の時間を使って、今まで弾きたくても弾けなかった曲に挑戦しようと思いました。そうして始めたのは、まず毎朝バッハを弾くことです。」

朴「ゴールドベルク変奏曲ですね。ゆかちゃんのInstagramストーリーでシェアされた時、拝見させて頂きました!本当に、素晴らしかった・・」

朝バッハ

守重「ゴールドベルクを完奏したというのは一番大きい達成でした。『とにかく毎朝バッハを弾く』というものを始め、ゴールドベルクの後は、インヴェンション、シンフォニア、平均律、イギリス組曲。」

朴「バッハだけでもピアノってこれだけのレパートリーを弾けるんですよね、本当に羨ましい気持ちです。バッハって、立ち止まって考えることが多く、気前よく「さぁ、次!この曲!」とは行かないのが私の経験上の現実・・」

守重「自分の中のルールとして、弾けない曲があったとしても、昼過ぎには持ち越さない。絶対朝で終わり。そうでないと、永遠に弾いてしまいます。」

朴「朝のみに徹底するんですね。6月に入ったけれど、朝バッハは今も続けていますか?」

守重「続けています。もちろん凄く複雑ではありますが、原点に戻れるような…自分の一番シンプルな部分に戻ることが出来るような気がして。あとは、やっぱり朝というのが、いいですね。心の健康になる。」

朴「自分を浄化するんですね。」

守重「このアイディアなんですが、ピアニストのアンドラーシュ・シフがやってたことなんです。ベルリンにいた頃にその話を聞いていて、良いなと思っていました。

時間があるからと言えど、毎朝バッハを続けるのも簡単なことではありません。丁寧で穏やかだけど、芯の強さも魅力な結加さん。

 教え始めてから…ここか!と気付くような、根本から自分が一番わかっていなかったなと思わされるのはバッハです。(レッスンをするようになって)意識的に自分が変われたかなと思うところがあります。と同時に、これまでのバッハはなんだったんだろう、とも思いました・・」

朴「人に伝える、教える立場となって改めて見えることもありますよね。深入りするほどに発見があるんですよね。」

守重「そうなんです。バッハって一概に『これ』というよりは構築というか建築美とか、そういう側面があるから・・もちろんピアノという楽器の問題もあるし…だから解釈も色々になります。」

朴「本当ですね。そうやって守重さんが悩みながら取り組んでいるバッハを教えてもらうなんて、生徒さんは幸せだと思います。楽器習うものにとって先生の影響って大きいものですよね?」

ベルリンの先生

守重「そうですね、本当に。音楽について本当に多くのことを学びましたが、特に先生のお人柄が大好きでした穏やかに厳しかった芸術に対する厳しさという面では譲らないものというものがあったので。音楽から離れたとしても、その考え方から影響を受けました先生のその雰囲気に触れるためにレッスンに通うのが楽しみ

ヘルヴィッヒ先生と

学ぶことは沢山あるのですが、音楽を浴びに行く感じでした。」

朴「ドイツの先生は、ここに何が書いてあるなど楽譜にすごく忠実ですよね。例えば再現部で出てきた同じパッセージに何か小さい変化があった時、喜んで発掘するというか」

守重「本当に。そこがトキメキポイントなんですよね!!レッスンでここはどう書いてあるかって、何度も尋ねられます。穴が開くほど楽譜を読み込みます

ヘルヴィッヒ先生は話には聞いていたのですが、とにかく細かかったです。例えば「ここはこう」と先生のご意見があったとして、それをまず私自身が骨の髄まで飲み込んでいるかどうか、見てらっしゃったと思います。ちょっと咀嚼したくらいでは全然ダメで。ちゃんとその場で体に染みついているかどうか・・笑!」

朴「骨の髄!!追求されるレッスンが目に浮かぶようです。私も先生から音楽以外の面でもどれだけのことを与えて頂いたか、思い出しました。彼らの生き方の芸術性の高さに私たちは救われたのかもしれないですね。」

自信

守重「自分が音楽を好きということとは別に、音楽を勉強するとなった時に、何度も壁にぶち当たり、自分の自信というのは長い間ずっとなかったんです。自信がないから、人に沢山意見を求め、言われてまた落ち込む…の繰り返し。」

朴「自信…よく分かります。」

守重「自信とはなんだろうってよく考えていました。10代の頃、周りにはキラキラしている人が多かったから、それが自信だなと思っていた事もあるんです。ということは、自分が背伸びをしないと辿りつかないこと、だった。

音楽家にとって“自信”とは、常につきまとう大きなテーマ

自信、自信、と自分に何度も言い聞かせて。大丈夫、大丈夫、自信ある、なんてことを本番前に言っていた事もありました。でも、ベルリンで根本的な基礎を学び、どういう風に芸術が発生するのかなどを改めて知ると、一つの軸みたいなものが出来上がった感覚があります。

当たり前のことなんですが、自信って自分を信じることなんだなって。自信があるない、という話でもなく、背伸びをすることでもなく。本当に当たり前のことなんですが、信じてあげられるかどうかなんだなと。」

朴「奥底のところまで自分を信じるって本当に難しいんですよね。」

守重「そうです。信じてあげられるものが、出来ているかどうか、ですね。」

緊張はどうやったら無くなるか・・自信とは・・みんなが通る課題ですよね、私もです。小学校公演をしていると、よく受ける質問でもあります。是非結加さんのように、突破口を見つけていただきたいですね。

デュオ・イプシロン

朴「守重さん、私の出身校京都芸術大学の友人でもあるピアニスト北端祥人さんと去年結婚されました。ベルリンで一緒に勉強されたんですよね。」

守重「そうなんです。昨年9月に完全帰国して、結婚いたしました。」

朴「このお二方、生年月日が同じなんです。(なかなかないことだと思うので、ワンポイント情報。)お二人で一緒に演奏もされますよね?」

守重「ベルリン時代から少しずつ演奏させて頂いていて…やっとグループ名をFacebookなどで公表しようかなと予定しています。

デュオ・イプシロン 

です。ドイツ語でYはイプシロン。すごく単純で、お互いの名前の頭文字(Yuka, Yoshito)のYなんです。色々候補はあったのですが、そこに帰結しました。ちょっとパブロン、薬みたいな名前なんです!笑」

北端祥人さんとのピアノデュオ。 デュオ・イプシロン

朴「確かに、薬!(薬はほとんどドイツ語名がついています。)でもYをイプシロンと呼ぶのはドイツ語だけだから、ただそれだけでドイツに関係があったんだなっていうことも分かりますね。リズムもいい。(タタタタンっ)」

守重「5月にも本当は仙台で予定があったのですが、なくなってしまって…(12月12にちに静岡の掛川での演奏会は開催予定だそうです♪)」

朴「お二人でデュオを始めたきっかけはなんだったんでしょう。やっぱり一緒にいるようになって自然と・・?」

守重「もう(北端さんと)お付き合いしてた時期だったんですが、最初のきっかけは、ベルリン芸術大学のピアノ室内楽の先生ツィヒナー先生からお誘いを受けて。ポーランドの作曲家のフェスティバルがあるから二台ピアノを弾いてくださいとのお話だったんです。それを、北端くんと、守重さんと、御指名だったんです。」

朴「デュオ・イプシロンは仲人がいて始まったんですね。」

守重「そうなんです!フェスティバルのために用意したので、初めて弾いた曲は誰も知らないような作曲家でした。ポーランドのロマン・マチエイェフスキという20世紀を丸々生きた作曲家でした。それをベルリン、ワルシャワで弾いて・・

今思うと、当時は意見の相違がかなりありました。

本当に未熟で恥ずかしいんですが、私の方が常に、『あぁしたい、こうしたい』と言ってしまいます。北端くんは冷静に、楽譜から読み取れることを、まず。という感じで。そこから自然と生み出されるものがある‥素材を生かすというか。私はそこを友人だった頃からすごく尊敬していました。私もそうなりたいと思っていたので、後々、自分の願望を言ってたことに反省もしました。
北端くんは北端くんで、自分にしかないものがあるとも言ってくれるので、そうだとしたらお互いないものを持っているのかなと、思うことはあります。」

朴「段々歩み寄ってくる部分が出てきますよね。」

守重「いつも、本番がいい気持ちで終われるんですよね。どんなに合わせでやりあっても・・笑(→音楽家はよくよく理解できる、やり合う!✨)

だから、何が良い悪いというのは本番が終わってからちゃんと分かりますそれが次の合わせにつながる。ただ、私が言いたいことを言わなくなったということは、全くなくて(申し訳なさそうに笑う結加さん)。でも、それが上手い具合に噛み合ってはきています。」

朴「長く一緒に弾いていると、その人の音楽観を理解できるようになってきて、まだ合わせをしていなくても、その人の音楽観で自分が楽譜を読み、いつからかそれが自分のものになっている、という感覚ってありますよね。」

守重「影響はかなり受けています。ただ、やっぱり苦労も、全ては幸せに繋がっていると思います。私たち、私生活には何も影響はないんです。」

朴「素晴らしい。苦労も全て幸せに繋がっている・・なかなか思えないことです。それ、双方の思いやりがすごいと思います。」

守重「北端さんが大人なんです。笑!リハーサルが終わった後、ケーキ食べにいく?とか、、よく考えたら相当気を遣ってくれていますね。モグモグしてたら気分がよくなるんで。」

朴「何が自分の気分をよくさせるのか、知ることって大事ですよね。そういうお互いへのフォロー大事なんですね…本当に勉強になります。」

思いやりのあるお二人のご活躍、ご夫婦デュオに今後もご注目ください♪

守重結加さんの音楽人生の原点

朴「守重さんのピアノとの関係、今までの道のりってどんな感じでしたか?」

守重「私の中学の頃の話をすると、、ショスタコーヴィチの第11番の交響曲を狂ったように聴くという中学生でした。」

朴「え!うーーーん、なかなかな中学生。(私はそういう風に聴いてた曲は、シューマンの交響曲でした)」

守重「どハマりしちゃうんです。飽きるという事がなく。それは音楽だけではなくて、なんでも。一度レバニラ炒めにハマった事がありました。一週間ずっとレバニラ。何かすごく好きなものに出会ってしまうと抜け出せないんです。」

レバニラ!!!!!

朴「嫌いにならないですか?」

守重「一ヶ月くらい続けた後、次にいこうかなという気持ちにはなっても、嫌いにはならないんです。ショスタコーヴィチ11番なんかは今聴くとその中学の頃の思い出が心にバッと浮かびます。

朴「ショスタコーヴィチとの出会いはどこだったのでしょうか?」

守重「中学の頃に一番好きな音楽というか、自分の心が動く曲を探してたんです。ドビュッシーのピアノと管弦楽のための幻想曲、とかオーソドックスなものもありました。我ながら変わってるなぁと思いますが、一番心に響いたのがショスタコーヴィッチだったんです。その時々にすごくハマるものというのがありました。その後、音楽高校へ進学して様々なことを教わって、自分自身どんどん変化していきました。その時々で変化しながらハマる曲があります

自分にとってのピアノや音楽人生は自分そのものだなと思います。ピアノを弾いたら自分の調子はすぐにわかるし、自分が体硬くなってたら、硬いよってピアノから教えてもらいます。

そのようにピアノと付き合うようになっているのは、中学の頃心を動かされる音楽をずっと求めていたということが根本にあります。」

朴「結加ちゃんにとって、感動する事が必要だったんですね。それを自覚し、音楽に求めていたっていうのは素晴らしい事です、クラシック音楽を選ぶべくして選んでいたんですね。」

本当に必要なものと不必要なもの

守重「この自粛期間からミニトマトを育て始めたんです。一ヶ月かな、花が咲きました。家庭菜園、すごくいいですね!」

朴「いつもは私たち移動してるから、そういう生き物をなかなか家で育てられないですよね。それは、いい機会でしたね。(やればよかったなぁ、と思いました!)」

守重「3月か4月初旬に、すごく…生産性がないって自分で思い、落ち込んだんです。皆さんそれぞれきっと疑問にぶつかったりしたと思うのですが、私の場合、『私は何も生み出せなくなった』ということにショックを受けて。その現状からパズルとミニトマトを始めたんです。」

朴「本当にみんなそれぞれに自分に問いかける時間となりましたよね。このコロナ、新しい出会いが意外とあったんですよね。生産性がない・・そういう気持ちになることはよく理解できます。」

守重「自粛期間は大変なことも多かったですが、音楽家としては、ある意味ではよかった部分もありました。」

朴「この自粛期間中に、何が本当に必要で何が必要でないのか、すごく考えさせられました。結加さんにとってはどうでしょうか?」

守重「よく分かります。私は、テレビやインターネットの情報量の多さに惑わされている‥これは必要・不必要なものがあると再確認しました。その収穫は大きかったです。ピアノ、音楽一つとってもヨーロッパの人は「今日ご飯何食べよう」くらいの気持ちで音楽を聴きに行く。でも、日本だと情報がとても多くて。例えばアーティストの情報があって、それで行くかどうか決める。もちろんそれは悪いと思っているわけではなく、単純に多いなと。」

朴「ドイツのコンサートのチラシって写真も載ってない事ありますよね。どこで、誰が、何の演目を演奏する。それだけですよね。」

守重「それで、私匿名でインスタ作ったんです。顔を出さず、手元しか映ってない、名前も出さないものなんです。生きていく心配がなかったら、究極これでも良いなと思えました

音楽を伝えるのにアーティストの情報を多すぎることに少し疲れていたんだと思います。今その匿名SNSは頻繁に続けています。練習の動画だったり、ゴールドベルクそこで挙げてたんです。私にとってそれはとても楽。そこが自分の居心地いいところと気づけた事は、すごくよかったと思っています。普段の活動とは少し違うとは思うんですが。」

朴「究極は本当に、その通りですね。音楽というものを最優先にしたい思いはありますよね。そして、SNSとのお付き合い、どのように発信していくのかというのは迷うところがあります。私も正直わかりません。」

守重「大切なのは、音なんですよね。歴史的な作曲家や演奏家が残してきたものって財産・価値がとても大きい。それが例えばコロナでオンライン化しても、その価値がなくなることって絶対にない実際、自粛期間中音楽に癒される事ができて・・形態はその都度時代に合わせて変わることはあっても、普遍的なものっていうのは消えることはないのかな、と思っています。」

朴「原点を感じることによって生まれる感動ですね。私も、“原石の素晴らしさ”改めて知るという機会になりました。」

守重結加さんの情報

 オフィシャル・ホームページはこちらから
 ツイッターはこちらから

編集後記

貴重なお話しを沢山ありがとうございました!こういう非常事態で、私たちの活動の場がなくなっていましたが、今だからこそ感じたことを共有できることで、励まされることが多々ありました。
 向き合う時間が増えたことでそれぞれ黙々と自分と会話してたわけですが、そこで発見したことというのは、離れていたにも関わらず同じように感じていたんだなと思うことばかり。
 結加さんは最後、情報の多さについて述べられていましたが、便利な世の中だからこそ、本当に大切なものは忘れないでいたいと思いました。まさにその、無くしてはいけない柔らかで繊細なものが音楽にあるんですよね。だから、こうして歴史を超えて、残っているんですよね。

守重結加さんとは、ベルリンで知り合い同じ時期に勉強をしてきたのですが、京都芸大の友人でもあるピアニスト北端祥人さんと結婚され、夫婦ともに同じ楽器という共通点(私たちはヴァイオリン・ヴィオラですがほとんど同業者)、またお二方同じであるその生年月日が私の弟とも一緒。という…年を重ねるたびにどんどん近づいている気がする方です。もう、読んでくださると分かると思うのですが、音楽の勉強に対する心持ちが素晴らしく謙虚で丁寧。話していると私の方も同期され心穏やかになっていくのが、分かりました。

そんな守重結加さんとの初共演が10月5日(月)東京・日暮里であります。

情報はこっそり公開しておりますので、どうぞご覧いただけたら幸いです♪
コロナ感染拡大防止のために、豪華メンバーを迎えながら限定数での開催になります😭

2020-07-06|
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