公演情報2020年7月12日
【宗次ホール京都弦楽四重奏団with田村響 公演】
京都弦楽四重奏団を楽しみにしてくださっていた方々には大変申し訳ありません。プログラムが変更になっております。
出演者:植村太郎、朴梨恵、荒井結、田村響
シューベルト:弦楽三重奏曲 第1番 変ロ長調 D.471
モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第2番 イ長調 Op.26
チケットはこちら、もしくは宗次ホールへ直接お問い合わせ下さいますようお願い申し上げます。(チケットぴあではご購入いただけません)
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激アツなプログラムが揃ってしまいました
プログラムが変更になってしまって残念・・私もその一人です。京都弦楽四重奏団の演奏は聴いていただきたいと思っていました。
ですが、変わりに決まったプログラムは私にとって激アツ(とても熱情的であること)なので、それはそれで本当に聴いていただきたい・・ものが揃いました。
ピアノ四重奏という分野に、私はこの10年間くらい惚れている気がします。きっかけはヨーロッパのスーパースターたちがこの分野でかっこいい演奏をしていたから!
それぞれの楽器の個人芸を強調するかのように対等に扱われ、ピアノと弦楽器の比重がほぼ同等・・なので、スーパースターたちが弾くと映えたのも、無理はないのです。
モーツァルトのピアノ四重奏曲K.478
2020年7月3日追記あり
今ではシューマン、フォーレ、ドヴォルザーク、ブラームスと数々の名曲を聴けるこの編成ですが、この分野を一番先に切り開いたのはモーツァルトです。
1785年、モーツァルト29歳。
1784年から1786年にかけて音楽家モーツァルト、特にピアノの大家としてのモーツァルトが、ウィーンの公衆から最も歓迎された時代で、実に12曲のピアノ協奏曲が書かれています。また、1872年より5年かけて作曲した6曲の弦楽四重奏曲(K.387,K.421,K.428,K.458,K.464,K.465)をハイドンに捧げています。
器楽作品、充実の黄金期でした。
出版社Hoffmeister社は3曲のピアノ四重奏の作曲を依頼します。ですが、Hoffmeister(作曲者でもある)は出来上がったこのト短調の作品のみで注文をキャンセルします。出版社が望んだのはウィーンのアマチュアの奏者のための作品でした。モーツァルトが書いたのは・・技術もさることながら、構成も高度な理解を要する作品。売り上げは伸びないと判断され、契約は打ち切られたそうです。その後他の出版社がプロジェクトを引き受けますが、結局その後作曲されたのはEs durのピアノ四重奏曲K.493のみでした。
当時Hoffmeisterが3曲気前よく買い取っていれば、モーツァルトのピアノ四重奏が三曲もこの世に残っていたのに。。と悔やまれます。 (・・でも依頼がなければ1曲も作ってなかったかもしれないですから、何ともいえないか。)
→室内楽を弾く時には好んでヴィオラを弾いたというモーツァルト。ピアノ・トリオにヴィオラが入った編成を興味深く、楽しく作っているうちにインスピレーションが溢れるほどに生まれ、(三楽章のロンドは本当に見事。メロディーの天才と謳われるモーツァルトらしくアイディアが止めどなく出てくる)アマチュア用に、なんてことは忘れてしまったのでしょうか。そんな風にも想像できます。
当時はピアノトリオでさえも、ピアノに少し色付けされたヴァイオリンとチェロがあった程度。そしてヴィオラは重要視されていなかった時代。本作品は革命的ではあったでしょう。
さて、モーツァルトのト短調。この調はモーツァルトが痛切でドラマチック、特別なときに使っているように思います。この作品より前に作曲された第25番の交響曲、また1788年作曲の40番の交響曲は類稀ない情熱を見せます。
また、この調性でモーツァルトといえば…私はオペラ『魔笛』第二幕のパミーナ(お姫様、夜の女王の娘)のアリアを思い出します。夜の女王のアリアはそれこそ超有名ですが、そのあとパミーナが、王子様に振られたかと勘違いし、悲しく歌うシーンがあります。
王子様に振られるならと、死をも望んでしまいます。(!)
夜の女王の悲痛な叫びも『魔笛』の聴きどころですが、どこかちょっと皮肉って書かれていますよね。このパミーナのアリアは、正真正銘の失望といいますか、どんよりと暗く憂鬱さを感じます。(ヨーロッパの人たちが、待ってました!と思うのも、このアリアだと思います)
その、アリアがト短調で書かれています。
ああ、そうなのね、消え去った・・・
恋の幸せ、永久(えいきゅう)に!
たのしい時は、もう二度と、
こころに、もはや戻らない。
タミーノ、見える?この涙、
あなたのために流すのよ。
恋に燃えない心なら、
死の安らぎよ、やって来て。
このアリアの前には3人の可愛い天使たち(Knaben)の三重唱があって、それはそれは物凄く可愛い音がするのですが、そっから失望へと変わるこのシーンが・・たまりません。
すみません、作曲時代からすると『魔笛』はあまり関係ない(1785年ピアノ四重奏作曲、1786年フィガロの結婚作曲)のですが、私はどうしても『魔笛』ファン。なので、モーツァルトの作品にはいつもどこかに魔笛の要素がないか探してしまいます。
さて、どの室内楽分野でも、後々楽器の役割が変わってきますが、ピアノカルテット第一世代モーツァルトの書いたピアノ四重奏もチェロの役割がバス部分でした。
モーツァルトは晩年までチェロやコントラバスをいつも下の方に書いています。
楽譜を見るとわかるのですが、ヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノの右手が一つのグループ、ピアノの左手とチェロが一つのグループのように見えてきます。
この点で、ブラームスとは一線を画した響きとなるのは、明らかです。
同じ編成でも作曲家にとって役割が違うと、全く別の響きになるのが、とても面白いところです。
モーツァルトの手紙 吉田秀和編訳 講談社刊
ブラームスのピアノ四重奏曲第2番
については後日書きたいと思います。
私が、ずっとずっと日本でひきたいなと思っていた曲なんです。
50分という大作、、長すぎるとの声からあまり取り上げられることはありませんが、私はブラームス3作のうちこの曲が一番好きです。(3曲個性が激しいので、どれも魅力ですが)
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